ゾンサガ伝説


2019年 2月 10日
 
 
 いやあまいったね、こんなにおっかけたアニメは初めて。

 僕のこの作品に対する総評は「勢いだけで笑えるアニメ」ではあるんだけど、それ以上に実は作りこみの凄さや「最終的に作品の持つ意味合い(テーマ)」やその楽曲が素晴らしくて、ゾンサガはほんとにサーガになったと言うか「伝説になった」んだとは思うよね。

 この作品が単に面白い作品に留まらず、最終的に素晴らしい作品と思われるのは「楽曲の良さ」とそれに込められた「メッセージの良さ」最終的には「テーマの良さ」だと思う。
 
 
 
 そんなこんなで今回はまず音楽論を言ってみたいと思うのね。


 僕は普段アイドルものなんて聞かないから、今回他のアイドル曲ってどうなんだろうかとザッと聞いてはみたけど、AKBとかたまに良い曲もあるけど全体的に音楽として別にそんなでもないかなあ。
 パヒュームみたいに音楽性としても素晴らしいのもあるけどね。
 後、ヒットした曲には名曲もあると思うけど、僕は聞いてなかったので。

 僕は音楽性については少し分かる人間で、歌詞を抜きにした、というか普段歌詞はほとんど気にしない人間だけど音楽の良し悪しは分かるし、だからアニソンでも「聞くに堪えないなあ」という曲は沢山ある。

 そんな曲でも人気があるのは一般の人は歌詞がよければ満足なんだろうなとは思ってるけど、ゾンサガの楽曲は歌詞を抜きにしても相当レベルが高いんじゃないかとは思うのね。

 「アツクナレ」「蘇れ」「フラッグをはためかせろ」あたりは音楽としても一流レベルだと思うし「目覚めリターナ」も素晴らしい、一曲完成としてはみれない「ようこそ佐賀へ(メタル)」やラップのもかなりレベルが高いと思う。

 それからちょい曲かと思ったら、アイアンフリルのファンタスティックラバーズがちょっと名曲で驚いたりね、びっくりしたよ(笑)
 ちょっとまて良い曲ってそんな簡単に作れるもんなの?

 とにかく、おそらく楽曲単体でも上位を取れるほどクオリティがあるような感じがするし、普通アニメのオマケとして作られる楽曲でそこまでというのもちょっとめずらしい気はする。

 アニソンでもたまに音楽性も素晴らしい楽曲もあるけどね、例えば今ザッと聞いてるんだけど「不可思議のカルテ」だか凄い曲もあるんだね、でもほとんど 8割程は有象無象なんだよね、ゾンサガみたいに名曲が3つも4つもというのはめずらしいんじゃないかな。

 少なくとも他の作品のアニソンとは、ちょっと歌謡曲としての本気度が違うんじゃないかという感じはする。

 そしてそれほどの要素が最前面の売りに出されず、言ってみれば「隠し要素ラスボス」的になってると言う事も実にめずらしい事のような気がするのね。

 ただ曲の担当の人が「メタルが好き」と言う事で、ゾンサガの曲は重低音重視のドンツクギュンギャンなロック調やテクノみたいな感じで、他のアイドル曲を聞くとシャンシャンシャンという上品な感じの曲調が主流みたいなので、ちょっと男性向きというか違うんじゃないかとは思う。

 合わせて思ったけど、それこそ昭和のアイドル純子くらいの時のアイドルって「100%男性おっかけ」だったような気がするんだけど(当時の事情もしらんがなだけど)、なんか今のアイドルって歌詞からして「女の子向け」なのね、しらんかった。
 女性が女性を追いかけるアイドルって、どういう意味合いで成立しているのか僕にはよく分からないんだけどね。

 だから今回のゾンサガのアイドル曲ってのも、実はちょっと革新的ではあるのかなあ、と思ったりして、女性アイドルでもメタルやロックもあるらしいんだけどねえ。

 まあでも何となく「1周回って昔の楽曲にはこんな感じのあったかなあ」という気も少しする、というかやっぱりどこか昭和の歌謡曲っぽくは感じるんだけどね。
 
 
 
 次はシナリオについて。

 やっぱり時間をかけてシナリオを練ったんだそうで、勢いだけのギャグ作品かと思ったら、案外構成も緻密に練られていて描きこみや作りこみもある。

 例えば1話没頭でトラックに跳ねられるシーンが最後にまた出てくるんだけど、そこで没頭の跳ねられるシーンの意味合いがギャグからもっと深い意味に変わる。

 ゾンビである事が単なる味付けでは無くて、テーマと演出上「ゾンビである事が必要」なレベルまで活かし切ってる。

 それは、個人的にとか社会的にとか地方的にとか「死んだ存在」「才能や運を持たない弱い存在」等々の暗喩に対する極端な振れ演出と、それに対する「蘇れ」テーマとか、そういうものに対する「応援歌テーマ」というものにまで昇華してる、単なるオブジェクト(物体)としてのゾンビじゃなくて意味を持たせてるのね。

 まあ元々のゾンビ映画もそういう社会的な暗喩はあったんだろうけどね。
 
 
 シナリオが良いと傑作になる。

 ただこれはどうしてかと言うと、今の日本のアニメでは作画はどれももう及第点レベルどころか絵画的に言ってもかなり高いレベルだと思うので、シナリオの作りだけ遅れてると思うからね、今はそうなってるんだと思うのよ。

 だから今マンガアニメで成功したかったら「シナリオにこだわる事」だと僕は思うのね。

 傑作の上でテーマ、つまり作り手が伝えたいメッセージが良いと社会的な現象、つまり怪作になるんだと僕は思うけどね。
 
 
 
 最後に思い入れや作りこみ「結局は熱意」について

 表情やしぐさの良さ、緻密さ、というのもあるようで結構作りこんだという事らしいのね。

 台本が普通のアニメの台本の厚さの3倍くらいあったんだそうで、カットも多くて絵の情報量も多いらしい。

 一見そんな風に見えないのがあるいはこの作品の凄さなのかもしれないけど、実はそこまで作りこまれた作品であったらしいね。

 表情もしぐさも振り付けも「こだわってるなあ」とは思ったけどね。
 
 
 さくらの持ち歌にしてこの作品のテーマ曲、ラスボス「よみがえれ」

 ここまで溜めてからの

 這い~上が~れ~♪

 これを伝えたかったんだって製作者の気持ちがビシビシ伝わってきます。
 
 
 何どっでも~何どっでも~立~ち上がれ~♪

 振り付けもカメラワークも「これをみんなに言いたかったんだ」って気持ちがガンガン伝わってくるカットです、ものすごい動きます、まさにグッドジョブ。
 
 
 白箱という胃の痛いアニメ(笑)で「作画に対する熱意や思い入れは見る人には伝わるんだ」というのがあって、ふ~んそうなのかあと思ったけど、ほんとにそうだね。
 
 
 素晴らしい作品、パフォーマンスには必ず「情熱、熱意」があると思うのね。

 エヴァの時もそうだったけど、僕はあれは色々と好きじゃないけど熱意だけは伝わってくるというか、だからこそ熱狂するんだと思う。

 僕にこれを書かせているのも熱意の伝播だからね。
 
 
 まあ最近思うけど、結局面白い作品なりパフォーマンス、面白さって何かと言うとその人なりの「思い入れとこだわり」なんだろうと思うのね。

 それが「作りこみ」になって味が出てくるんだろうとは思うのよ。

 だから最後には結局、熱意、情熱が傑作が出てくる条件なんだとは思う。

 この作品にはそういう熱意があると思うのね。
 
 
 この作品ほど最終的にストレートに元気とやる気をもらえて、背中を押されてる感じのするアニメもめずらしいよね。
 あるにはあるんだろうし、結局はどの作品もそういう気持ちで作ってはいるんだろうけどね。
 
 
 みんなもう分かってると思うけど、この作品は

 戦隊ものだからね(笑)

 
 
 「フローの文明とストックの文明」というのがあって、日本は木材建築が主流で全て「時間とともに朽ちて行く」文明であって、文化的なものもそうだと言われていて、例えば「浮世絵」は世界的に見ても素晴らしいんだけど当時から二束三文の扱われ方で、雑紙(ざつがみ)くらいにしか見られていなくて残ってない。

 これは現在もそうで、マンガにせよアニメにせよ雑誌に一度掲載されて流されていくみたいな感じで端から消費されて一過性でどんどん消えていく。

 その分「遺伝子」だけは継承されて、どんどん刷新されて行く、とは言われている

 例えば今のマンガアニメも浮世絵の継承だとは言えるだろうしね。
 
 
 対して西洋の文明は石造りが主流で「一度建築されたら何百年と残っていく」作り方をして、例えばこれはディズニーがそうだけど、それがアニメとしては一番の高みであり、ずっと継承されていく。

 例えば西洋の画の原点はダヴィンチとかミケランジェロとか宗教画だと思うけど、これは今でも鑑賞に堪える。

 だから西洋のアニメはディズニー代表でディズニーの完成度が一番高い、日本の場合は手塚治虫が代表だけど、手塚アニメ自体は当時から二束三文の作り方で残ってはいない、しかし今のマンガニメは全部手塚のコピーで「手塚遺伝子」だとは言える。

 こんな風になってる。
 
 
 今回ゾンビランドサガはめずらしく少しはストック風に、つまり時間と予算をかけて作られたんだと思う。

 日本の文化ももう少しそのように「コストをかけて」作ってくれれば、そんなに見ても見なくてもいい駄作ばかり量産されないだろうと思う。

 まあ僕はアニメ自体はそんなに感心がないから、どうでもいいと言えばそうだけど。

 せめて今の2倍の予算と時間をかけるような作り方が主流になれば(合わせて作数を半分にすればいい)、もっと面白い作が出るだろうし、なんか商品の宣伝のオマケ程度の「居るだけアニメ」じゃなくて「作品」と呼べるようなのは、案外このゾンサガレベル位からなんじゃないかと思ったりはする。

 もちろん素晴らしい作品がたくさんあるのは認めるんだけど、シナリオの練りといい作画の練りといいやっぱり「丁寧に作ればリターンがある」というだけの話でもあるのかなあと。

 でもまあたぶん「市場の原理」的に言って、現在の予算と時間の掛け方が「全体としては最大限のパフォーマンス」を引き出しているやり方に落ち着いているんだろうとは予想するんだけどね。
 それは必ずしも「予算と時間をかけて作れば傑作になる訳じゃない」んではあろうしねえ。

 でもね、だとしてもやっぱりせめて2割くらいの作品にはそういう石造り的な「後の世に残るような作品の作り方」をして欲しいと思うのよねえ、そう思いません?

 それが、この作品が傑作になった理由の一つだと思うのね。
 
 
 
 というわけなので総評を。

 ギャグも一流、シナリオも一流、演出も一流、楽曲も一流、作画はまあ他のアイドルものの方がキラキラで綺麗なのかもしれないけど思い入れや作りこみは他の作品を凌ぐレベル、そして題材がチープでスタッフはそこまで思って無かったし、初評はB級だろレベルで中身は伝説級だった、と。

 いやあ、もうこんなのは計算や狙って作れるようなもんじゃ無いだろうね「天の一角から放たれた小さな奇跡」という感じがして、やっぱり不思議な作品だと思うなあ。
 
 
 
 しばらく僕はこの作品を「教科書、お手本、参考書」として位置付ける事にした。

 見た目からはそんな作品だなんて想像もつかないだろう?

 まさか全然興味の無いゾンビやアイドルものでそなんのが出るなんて思いもしなかったさ。
 
 

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